その他、広くささやかれている2020年、2022年、2025年問題…
少子高齢化が急速に進む今、需要の減少を止めることはできないにもかかわらず、さらに供給が増えるとなれば、不動産価格が下がらないほうがおかしいとも言えるでしょう。
2019年現在、東京オリンピック開催決定による建築費の高騰、日本銀行によるマイナス金利政策、売却益目的の海外不動産投資家の参入など複数の要因が重なり合って、都心部ではバブル期の価格水準を超える数値を記録しています。
そんな中、2019年4月17日、日銀は不動産融資が過熱している旨の警鐘をならしました。「不動産業向け貸し出しの対GDP比率」の指標が、1990年のバブル期と同じ加熱状態を表す段階に入ったというのです。海外の不動産市場も軒並み頭打ちの状態になっていることから、いつバブルが崩壊してもおかしくない段階に来ています。
今回の不動産バブルについては、起因となっている理由が東京オリンピックや日銀の金融緩和など一時的なものです。東京オリンピックは2020年夏に閉会しますし、世界的な利上げが始まっていますから、日銀のマイナス金利政策もいつ終了してもおかしくありません。
特に都心では東京オリンピックに向けて、東京の晴海の選手村は想定居住者数は1万2000人以上で、かなりの人員を容するキャパシティを備えています。しかし、オリンピック終了後は改装され、2022年にまとめて新築として分譲される予定です。つまり、一気に相当数の戸数が売りに出されることになり、すべてを売りぬくために価格も下げるという見方が大半。安価な新築分譲が市場に出回れば、高止まりした不動産が割を食う形で売れ残り、さらに供給過多の状況が生まれるでしょう。
都市部で「生産緑地」として保護されていた農地が、宅地(住宅のために使用できる土地)として大量に売りに出されることによって、土地の供給が過剰になり、結果として不動産の下落にもつながると言われている問題が2022年問題です。
生産緑地とは、都市部にも計画的に農地を残しておこうとすることを目的に指定された農地のことで、生産緑地に指定されることで、固定資産税や相続税の面でメリットを受けることができました。なぜ、2022年のタイミングで生産緑地が宅地として売りに出されるかというと、生産緑地の制度が1992年に適用され、30年経過することによって市町村長に生産緑地の買取を依頼できるようになるからです。
30年が経過し、生産緑地としての適用を受けられ無くなれば、税金面での優遇を受けられなくなります。そのため、多くの生産緑地保有者が市町村長への買取を依頼する、もしくは個人や不動産業者等に土地を売却すると考えられるのです。
不動産の価格を決める一番の要因は、需要と供給のバランスです。ただでさえ人口減少も深刻化してきている現在において、大量の宅地が一斉に売りに出されてしまうと、供給過多になり不動産価格の下落は免れません。
政府は2022年問題を見据えて「特定生産緑地」と呼ばれる制度を導入し、生産緑地の認定を再度10年間受けられる制度を開始しました。しかし、生産緑地制度導入から30年が経過した今、年齢や高齢者不足の問題を抱える農家の人たちが、どれだけ特定生産緑地制度を利用して農地として利用継続していくかは疑問です。
2025年問題が実物資産の価値の低下に繋がりかねない一番の要素は、東京での人口減少と都市開発ラッシュの終了です。平成29年に内閣府が発表したデータによれば、人口増加が続いていた東京にも、とうとう人口減少の波が押し寄せてくると言われています。
東京オリンピックの開催に伴って好調だった都市開発も落ち着き始め、いよいよ不動産市況にプラスに働く要因がなくなり、下落基調に入る可能性が高くなりました。さらに追い打ちをかけるように実物資産価値は値下がりしていく可能性が高いと考えるべきでしょう。それはもう5年後、直前に迫ってきています。